SETI(せち)をおうちで(SETI @ home)

 SETIとは、Search of Extraterrestrial Intelligence(地球外知性探査)のことだ。電波望遠鏡を使い、宇宙からのさまざまな電波を受信し解析、知的生命の痕跡、いわゆる「ETからのメッセージ」を調べるプロジェクトだ。(※1)

 データはプエルトリコのアレシボ電波天文台で受信される。データは1週間で257ギガバイトにもなる。その生データは磁気テープ10本にまとめられ、カリフォルニア大バークレイ校に空輸される。(※2)

 ここからが大変な作業だ。生データにはパルサー、クエーサーなど、天体そのものが出している信号や、われら人類が発信した電波(ラジオ・テレビなどの輻射)も混ざっている。大量にノイズを含んだ状態だ。コンピュータを駆使し、宇宙のすべての方角と周波数帯域で解析を行う。ここでは膨大なCPUパワーが費やされている。

 前振りが長くなったが、冒頭の「SETIをおうちで」というのはこの解析をインターネットに繋がっている世界中のパソコンで分散処理させようというプロジェクトだ。バークレイのコンピュータでは処理が追いつかないのでデータ解析のボランティアを募るという、おそらく世界初の計画だ。

 このたび、解析に使うクライアントプログラムが公開された。(※3)Mac用、Unix用、Windows用の3種類がhttp://setiathome.ssl.berkeley.edu/から入手できる。インストーラーの形式になっていて、再起動後、一度だけユーザー登録が必要(名前またはニックネーム、メールアドレスをWEBで公開してもよいか、とか国名、なぜか郵便番号の登録も必要)。あとは必要に応じてインターネットに繋げ、生データを受け取り、処理が始まる。つなぐ前に確認のダイヤログがでるので、ダイアルアップの人も安心だ。

 SETIプロジェクトでは1週間分257ギガバイトの生データを0.25メガバイトごとに分割。世界中のクライアントソフトに送出する。クライアント側で解析が終われば、またインターネットに接続してもらい(もちろん電話をつなぐ前にそのむね警告が出る)、解析結果をバークレイ校のサーバーに送り込むと同時に、新しい0.25メガバイトを受け取るという仕組みだ。

 クライアント5万台でスーパーコンピュータ1台分の能力になるらしい。クライアント登録は48万人を超えどんどん増加している。すべてSETI@homeのホームページで進行状況がウオッチできるし、自分が何ユニットの解析をしたか確認できる。上位100人の名は希望すれば,  公表される。(※4)

 解析中はマスマティカで作ったような3Dグラフが描画され、クールなこと、この上ない。スクリーンセーバーを使うともっとスピーディだ。

グラフで突出したところが、探している「何か」だ。大部分がノイズだが、もしビンゴなら、地球外知性の共同発見者(のひとり)として、人類史上に永遠に名前が残るだろう。

 プロジェクトは2年間継続される(ホームページのFAQ=よくある質問コラム=には「2年後には違うアプローチで行われるだろうと書いてあった)。たぶん何も発見はされないだろうけど、こんな計画に一個人で参加できることって、ちょっとうれしくなるじゃないか。

追伸:高校の天文部のみなさん、夏休みの合宿、文化祭の発表などで参加してはどうだ。

(※1) 日本でも昨年公開になり、話題になった「コンタクト」(原作=カール・セーガン、主演=ジョディ・フォスター)は映画の前半を解析の描写に費やしていた。劇中、プロジェクトが休止に追い込まれる寸前に、知的生命からの信号が受信される。ご都合主義的プロットはともかく、受信の第一報を受けたスタッフがイスを転がしながらずらりと並んだコンピュータ端末を片っ端から起こしていくシーンと「スピーカーをゴンッ。モニタをゴンッ(=わかる人にはわかるね)」が印象的だった。

(※2) インターネットで送ればよいようなものだが、ホームページには「かの地のインターネット回線が細いので」と言い訳していた。

(※3) Mac版解析クライアントのversionは1.0、データ解析終了時に画面が乱れるなどのバグがあるが、1.1で修正される予定。

(※4) ただしランク入りは焦らないほうがいい。PPC G3/233のマシン(PowerBook1400c改)で1ユニット解析に27時間16分かかった。CPUの空き時間を使うので、実際には丸3日近い。99年6月4日現在、全世界のトップは5,134ユニット、第100位でも313ユニット。日本だとトップが601ユニット、100位が36ユニット。解析をマルチタスクで処理できるUNIX使いの人か、学校など動員力のあるところでないと今からのランクインは困難だろう。(グループでのエントリーも5月23日から始まっている)

追記 2000.05.17 参加者が200万人を突破。寺沢屋は解析数4,899、合計CPU時間6.29年、1ユニットの平均解析時間11時間14分。
 世界ランキング1,737位、国内56位。がんばっているでしょ。寺沢屋の成績はこちら

追記2 2003.12.28 参加者480万人。寺沢屋は解析数21,123、合計CPU時間31.735 年、1ユニットの平均解析時間13時間09分。
 世界ランキング4,887位、国内253位。息切れしているけど、この間の経緯はまたそのうち